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SLGからPLGへ 瀕死状態から復活し、昨年比2倍成長を達成するApollo.ioの軌跡 【SaaStr 2024 参加レポート#2】

2024年11月15日

この記事は約6分で読めます。

引き続き、SaaStr Annual 2024の現地参加レポートをお届けします。今回は、前回のPLGの概念的な内容にも関連して、より具体的な事例をご紹介していきます。

主に取り上げるのは、SaaStrより、アウトバウンドセールスソリューションを提供する「Apollo.io」のSLGからPLGモデルへの転換ストーリーです。

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参照: https://www.apollo.io/

今回のベースとなるSaaStrのセッションおよびスピーカー

『Transitioning from Sales-Led to Product-Led Growth and Scaling to $100M ARR』 Tim Zheng氏, Apollo.io’s Co-founder and CEO

今でこそシリーズDに到達し、有料顧客も昨年と比較して今年は2倍を達成するほどの大きな成長を遂げているApollo.io。しかし、非常に苦しい時期を経験してきたこともグラフから読み取ることができます。

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2015年の創業当初から2024年までの業績グラフ(SaaStrセッションにて著者撮影)

実は瀕死状態だった過去も…!

2016年から2020年にかけ、Apollo.ioの業績はほとんど横ばい。資金繰りも非常に苦しくなり、あと半年でキャッシュが尽きるところまで追い込まれていました。

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2016年から2020年にかけてのApollo.ioの業績(SaaStrセッションにて著者撮影)

また、Apollo.ioと同じくセールステックのプロダクトを提供するSaaS企業は、ざっとこれくらいいるそうです。

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Apollo.ioも参入するセールステック市場のカオスマップ(SaaStrセッションにて著者撮影)

まさに競合ひしめくレッドオーシャンです。このような市場で、どのように選ばれる存在になるのかがApollo.ioにとっての大命題でした。

PMFだけでは業績向上には不十分

Founderであり、CEOのTim氏によると、プロダクトがPMFしていたにもかかわらず業績が芳しくなかったことの最大の理由は、「その提供モデル/プライシングモデルと、提供チャネルがお互いに、そして市場にマッチしていなかったこと」だそうです。

さらに続けて、PMFではなく、PMMCモデル(Product-Market-Model-Channelモデル)が重要だと話しました。

Product-Market-Model-Channelが肝

具体的には下記の通りです。

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ミスマッチな提供モデルとチャネル:

  • 提供モデル: 年間契約 かつ 一律$10,000
  • チャネル: ハイタッチな営業主導

つまり、プロダクトとSMBというターゲットはマッチしていた一方で、その提供モデルとチャネルは、どちらかというとエンタープライズ向けだったのです。

SMBには価格が高額すぎたり、年間一括契約という形態が縛りに感じられやすかったのです。

また、チャネルとしても、営業が初期フェーズから介入をする形で、Apollo.ipの組織体制としてもスケールには不向きな方法で対応をしていたそうです。

そこで、Apollo.ioは、業績不振のボトルネックであった「提供モデル」と「チャネル」をそれぞれ下記のように改善しました。

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ミスマッチ改善後:

  • 提供モデル: 無料 もしくは $99/月
  • 提供チャネル: 完全セルフサーブ

また、これによりプロダクトのグロースモデルも大きく変わりました。いわゆるSLGからPLGへの転換です。

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Apollo.ioのPMMCモデルの見直し前後 (セッションに基づきPtmind作成)

以前のグロースモデルと転換後のグロースモデルを比較すると次のようになります。

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以前のモデル:SLG (SaaStrセッションより著者撮影)
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転換後のモデル:PLG (SaaStrセッションより著者撮影)

また、Tim氏によると、PLGモデルの原則は下記の通りです。

PLGモデルの原則

  1. セルフサービス:セールス担当者を必要とせず、ユーザーが自分で簡単にできるようこと。
  2. マネタイズは利用後に:収益は、特に無料トライアルやフリーミアムモデルを通じて、ユーザーが製品に関与した後のこと。無料ユーザーはユーザー基盤の初期成長を表すこと。
  3. リテンションが鍵:無料ユーザーと有料ユーザーの両方を維持することが、持続可能な成長に重要。

Tim氏は、PLGモデルへの移行後、最大のフォーカスは、マネタイズではなく、無料ユーザーのプールをいかに大きくできるか、そしてユーザーのいかに維持できるかだったと言います。

前回の記事で取り上げたMaria氏もセッション中「PLGにおいては、無料ユーザーは、将来の有料顧客と捉えるべき」と強調していました。

PLGモデル移行後の注力指標

モデルが変われば注視する指標も変わるものです。PLGモデルに移行してから、その成功を測る指標も見直され、新たに3つの指標と目標数値が設定されました。

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設定した指標とその目標数値 (SaaStrセッションより著者撮影)

新たな3指標:
1. リテンションを測る無料ユーザーのリテンション率
2. マネタイズを測る有料顧客のコンバージョン率
3. 獲得を測る週次のサインアップ数

特に、リテンション強化に注力し、ユーザーの定着率は約5%から約30%へと6倍に高めることができたそうです。

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6倍のものグロースの軌跡 (SaaStrセッションより著者撮影)

ポイント

  • 「習慣化における重要な瞬間」を定義し、ユーザーをコンテンツやサポートでそこに導くこと
  • データに基づき、施策のテストを怠らないこと
  • LinkedInの活用や、オンボーディングフローの見直し、直通ダイヤル機能などのアップデートと改善を行うこと

今ある機能や方法をテストし、改善することに徹し、逆にプロダクトには新機能を追加するなどのアプローチは取らなかったそうです。

価格設定の「デッドゾーン」

Tim氏によると、価格設定の変更と、新価格の際には、下記の図のように、「デッドゾーン」が存在するとのこと。

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価格設定とそれに応じた獲得概略(SaaStrセッションより著者撮影)

Apollo.ioのターゲットユーザーであるSMBsを考慮すると、まさにこのデッドゾーンをいかに乗り越えるかが重要な分かれ道でした。

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コンバージョン率の遷移 (SaaStrセッションより著者撮影)

しかしApollo.ioは、2020年から1年で、コンバージョン率を1%以下から3%前後まで上昇させました。主な取り組みは下記の通りです。

  1. 新機能ゲート:「機能ゲート」を導入し、特定の機能を有料層の後ろにロックすることで、無料ユーザーのアップグレードを促進。
  2. 新しい価格設定ページ:価格設定ページのデザインを一新することで、アップグレードのメリットを明確にし、価格体系をより魅力的でわかりやすいものに。
  3. 価格設定と購入プロセスの摩擦軽減: チェックアウトプロセスを簡素化し、ユーザーのアップグレードを妨げる障害を減らす努力。
  4. 価格設定のA/Bテスト:異なる価格設定モデルのA/Bテストを実施し、どれが顧客に最も響くか検証。
  5. アップグレードのバックエンド改善:コンバージョン率に良いの影響を与えることができるアップグレードプロセスにおいて、ユーザーがスムーズな体験ができるようにバックエンドを改善。

特に、価格設定そのものをA/Bテストをすることは、チャレンジングでありながら、効果が大きく、価格設定のわかりやすさや納得度を図るのに効果的だったとTim氏は言います。

「これいいよ、無料で使えるし」の強さ

セッションの終盤でTim氏は、PLGのユーザー獲得段階における黄金手法とも言えるバイラルについても言及。

Apollo.ioでは、特に登録から無料ユーザーとしてプロダクトを利用する層を対象に、NPSリサーチを行なっていました。

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PLGモデル内におけるNPSループの注力エリア(SaaStrセッションより著者撮影)

セッションを聴きながららためて感じていたのは、無料でも使えることで、他者におすすめをしやすいプロダクトであることはやはり非常に重要だと言うことです。

誰かにモノを薦める上で、無料で使えることがお薦めする側にとってもされる側にとっても、ハードルを大きく下げることは明白だと思います。

無料だから比較的身軽な気持ちで薦められる、無料だからとりあえず始めてみようと思いやすい、というように、無料であることは利用の促進をするに十分足る理由になると感じます。

SLGからPLGへの転換は容易ならず

いかがでしたか?Apollo.ioのCEO自ら語るSLGからPLGへのモデル変換の変遷に関するセッションをご紹介しました。

次回もSaaStrより、DeepLのアメリカオフィスオープンに関する秘話と、新市場展開時のポイントをご紹介します。

どうぞお楽しみに!

いかがでしたでしょうか?ぜひシェアをお願いいたします。