blog»ブランド・マーケティング»【購買心理学】ECサイトのコンバージョン率を高める7つの心理トリガー
大森 葵
2025年03月21日
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なぜ顧客はあるショップでは買い物が進み、別のショップでは何も買わずに終わることがあるのか?
その答えは消費者心理学にあるかもしれません。ECサイトでは、顧客は「今すぐ購入」ボタンをクリックするか、それともカートに入れたまま離脱するか:その判断は感情や習慣に大きく影響されることがあります。
成功するECブランドは単に商品を販売するだけでなく、消費者心理を的確に捉え、購入を後押しする戦略を活用しています。
本記事では、大手ブランドが活用している七つの心理トリガーをご紹介します。これらのテクニックを取り入れることで、訪問者を購入者へと効果的に導き、コンバージョン率の向上に繋げることができるかもしれません。
誰もが「お得なチャンスを逃したくない」と思うものです。
FOMO(Fear of Missing Out、機会損失の恐怖)は、人々がチャンスを失う前に素早く行動するよう促す強力な心理トリガーです。
例えば、Amazonは、このFOMOをタイムセール(Lightning Deals)やプライムデーなどのキャンペーンで巧みに活用しています。
顧客は「期間限定の割引」+「カウントダウンタイマー」を目にすることで、「今すぐ購入しなければ!」という心理状態になり、特別価格が終了する前に購入を決断する傾向があります。
ECサイトにおけるFOMOの活用方法:
FOMOを効果的に活用することで、顧客の意思決定を加速させ、コンバージョン率を向上させることが可能です。ただし、必要以上に顧客の不安感や焦燥感を煽るのは逆効果になるため、適切に活用することが重要です。
人は意思決定をする際、最初に得た情報の影響を受けやすいです。この現象をアンカリング効果と呼びます。最初に高い価格を見た場合、その後の価格がよりお得に感じられることがあります。
例えば、多くのオンライン宿泊予約会社がこのアンカリング効果を活用し、割引の魅力を強調する表示を行っています。
以下の図の場合、元の価格(81,024円)を灰色で表示し、割引後の価格(64,824円)を大きく太字で強調することで、消費者に「大幅に安くなった」と感じさせ、購買意欲を高めています。
このように、最初に提示された高い価格が基準(アンカー)となることで、割引後の価格がより魅力的に見え、最終的な購入決定を促す効果が期待できます。
ECサイトでの活用方法
アンカリング効果により、顧客は「よりお得な取引をした」と感じ、購入意欲が高まります。
人は他人の選択を信頼する傾向があります。ある商品が人気であればあるほど、顧客は安心感を抱き、購入しやすくなります。これがバンドワゴン効果です。
人々は「他の人が知っている情報を自分は知らないかもしれない」と考え、多数派の選択に従いやすくなります。
Glossierはユーザー生成コンテンツ(UGC)を活用している米国発のビューティーブランドです。彼らは大掛かりな広告に頼るのではなく、商品ページやSNSで実際のユーザーのレビュー、推薦、写真を掲載することで、顧客の購入意欲を高めています。
ECサイトでの活用方法
他の顧客が購入し、満足している様子を見せることで、新規顧客の安心感が高まり、コンバージョン率の向上につながります。
人は誰かから恩恵を受けると、お返しをしなければならないと感じます。
この心理を返報性の原理と呼び、顧客のロイヤルティやコンバージョン率を高める最も効果的な方法の一つとされています。
例えば、フランス企業であるLVMHグループ傘下の化粧品専門店Sephoraは、この原理を巧みに活用しています。
購入ごとに無料のサンプルをプレゼントすることで、顧客に付加価値を提供し、満足感を高めています。このような小さなギフトは好印象を与えるだけでなく、リピート購入の可能性も高めます。
ECサイトでの活用方法
先に恩恵を与えることで、顧客に「このブランドの一員である」という帰属意識を持たせ、リピート購入につなげることができます。
人は専門家や有名ブランドを信頼する傾向があります。ブランドが権威として認識されると、顧客は安心して購入を決断しやすくなります。
この心理を権威バイアスと呼び、権威の推薦、認証、専門家の評価は売上の向上に大きく貢献することがあります。
例えば、多くのテクノロジー系ブランドは新製品を発表する際、業界の専門家やKOLを招いて詳細なレビューを行い、受賞歴や専門家の評価をアピールします。これにより、消費者は「最先端の優れた製品を購入している」と感じやすくなります。
ECサイトでの活用方法
顧客は「信頼できる権威」と認識されたブランドを選びやすくなります。専門的なイメージを確立することで、顧客の安心感を高め、より多くのコンバージョンにつなげることができます。
人は一度小さな約束をすると、その後も一貫した行動をとろうとする傾向があります。これをコミットメントと一貫性の原則と呼びます。
顧客が最初の小さなステップを踏み出すと、無意識のうちに一貫性を保ちたいと考え、次の行動につながりやすくなります。
例えば、アメリカ発の語学勉強アプリであるDuolingoは、この原則を巧みに活用しています。
連続ログインボーナスを導入することで、ユーザーに毎日リマインドを送り、一度学習を始めると「連続記録を途切れさせたくない」という心理が働きます。
連続ログインボーナスを導入することで、ユーザーに毎日リマインドを送り、一度学習を始めると「連続記録を途切れさせたくない」という心理が働きます。
この習慣化の仕組みにより、ユーザーの定着率が向上し、最終的には有料版であるDuolingo Plusへのアップグレードを促進しています。
ECサイトでの活用方法
顧客が小さな一歩を踏み出すことで、最終的な購入へとつながりやすくなります。
顧客は価格を単独で評価するのではなく、複数の選択肢を比較して判断します。
おとり効果とは、意図的に魅力の低い選択肢を加えることで、顧客が特定の商品を選びやすくする価格戦略のことです。
例えば、Appleでは、この手法を巧みに活用し、消費者をより高価格なモデルへ誘導する戦略を取っています。
以下の写真のように、3つのモデル(iPhone 16e・iPhone 16・iPhone 16 Plus)が並んでいる場合、標準モデルであるiPhone 16が「おとり」の役割を果たします。
この価格設定により、消費者は「少しの差額でiPhone 16 Plusを選んだほうがコスパが良い」と感じ、アップルが最も売りたい高価格モデルを選びやすくなるのです。
ECサイトでの活用方法
価格や選択肢の見せ方を工夫することで、顧客の購買行動をコントロールし、コンバージョン率を向上させることができます。
顧客の購買決定は商品の魅力だけでなく、感情、習慣、そして心理的バイアスにも影響を受けます。たとえ同じ商品であっても、見せ方や伝え方によって顧客の感じ方や判断は変わるものです。
ご紹介した心理学的トリガーを適切に活用することで、より効果的に顧客の購買の意思決定を促し、コンバージョン率を向上させることができるでしょう。また、購入後の満足度やブランドへのロイヤルティを高めることにもつながります。